保険適用・保険適用外になる入れ歯の違いと費用
虫歯や歯周病などで歯を失うと、何らかの形で欠損部を補わなければいけません。
その最もスタンダードな方法が入れ歯です。
もちろん、失われた歯の本数やその位置によっては、様々な治療法が考えられますが、入れ歯の適用範囲は非常に広いため、多くの方が関心をを持っている歯科治療ではないでしょうか。
保険適用・保険適用外の入れ歯の違い
歯科治療は、保険適用と保険適用外の2種類に分けることができます。
入れ歯に関しても同じで、使用する材料や採用する治療法によって、保険が適用されるか否かが決定されます。
下記に保険適用と自費の比較を簡潔にまとめましたので、まずはご覧ください。
次により具体的に、どういった入れ歯が保険適用されるのかについて、解説していきます。
保険適用になる入れ歯
保険適用の入れ歯に使用されている材料
保険が適用される入れ歯には、アクリルレジンと呼ばれる材料が使用されています。
アクリルレジンとは、簡単にいえばプラスチックの樹脂です。
また、部分入れ歯には、歯列内に固定するためのクラスプと呼ばれるバネが備え付けられているのですが、保険適用内の入れ歯では、このクラスプが金属製となっています。
全ての歯を失った場合に作ることになる総入れ歯には、このクラスプと呼ばれるパーツがありません。ですので、ほぼ全てがアクリルレジンで作られているといえます。
歯の部分にあたる人工歯は、硬質レジンなどの材料が使用されます。
保険適用の入れ歯のメリット
保険適用の入れ歯は、とにかく経済的であるというメリットを第一に挙げることができます。患者さんの負担割合にもよりますが、自費治療と比べたら負担が200分の1以下になるケースもあります。
入れ歯は、時間が経過するとともに、摩耗したり変形したりすることも多いので、作り直す際の経済的負担も軽く済みます。その他、治療期間が比較的短くなるというメリットも挙げることができます。
保険適用の入れ歯のデメリット
保険適用の入れ歯は、自費で使用できる材料と比較すると、少し劣化しやすい傾向があります。そのため、人工歯の部分の摩耗や、粘膜に相当する義歯床部分の変形などが比較的起こりやすいというデメリットがあります。
また、比較的強度の低いアクリルレジンを使用するため、自ずと床部分が厚くなり、装着感が悪くなるという難点もあるのです。
治療法が保険治療では限定されるのでベストなものはできません。
保険適用の入れ歯の費用相場
保険が適用される入れ歯の場合、部分入れ歯か総入れ歯によって治療費が異なります。
部分入れ歯は、複数本の歯を失った場合に装着するもので、保険で使用できる材料はアクリルレジンと金属です。
失った本数に応じて治療費が異なりますが、相場としては5,000~14,000円程度となっています。一方、総入れ歯は文字通り全ての歯を失った際に装着するもので、保険ではアクリルレジンと硬質レジンによって作製されます。
費用相場は10,000~15,000円程度で、部分入れ歯とそれほど大きな差はないといえるでしょう。
保険適用にならない入れ歯(自費)
保険適用にならない入れ歯に使用されている材料
自費治療の入れ歯には、保険治療では選択できないような材料を使用することができます。
まず、部分入れ歯に関しては、クラスプと呼ばれるバネの部分を金属からポリアミド系と呼ばれるナイロンの一種に置き換えることが可能です。総入れ歯の義歯床(口腔粘膜に当たる部分)に関しては、保険ではアクリルレジンだったものが、自費治療では金属を使用することができるのです。
このように、保険適用にならない入れ歯では、使用できる歯科材料の選択肢が大幅に広がるといえます。
保険適用にならない入れ歯のメリット
例えば、歯と歯の間に何らかの異物が挟まっていると、気になって仕方がないことがありますよね。いざ取り出してみると、驚くほど小さな食べカスだったことがわかります。
つまり、私たちの口腔というのは、非常にデリケートな部分であるといえるのです。
そんな口腔内に絶えず存在し続けるのが入れ歯ですから、できるだけ装着感を高めたいものです。
保険が適用されない入れ歯では、使用する材料を厳選することで、装着感を向上させることができます。
それだけでなく、ものを噛むという運動を最大限サポートできるよう、デザインすることも可能です。具体的には、部分入れ歯のクラスプを金属からアクリルレジンに変えることで、装着した際の異物感が減少します。
また、口腔粘膜と一体化するようにデザインされていますので、咀嚼運動を阻害することもなくなります。
一方、総入れ歯の義歯床では、使用する材料をアクリルレジンから金属に変えることがあります。一見すると、レジンから金属に変えることで、装着感等が悪くなるように感じます。けれども、義歯床に関しては、金属を使用することが装着感が向上するのです。当然ですが、アクリルレジンというのは金属と比べると脆い材料といえます。
ですから、ある程度厚みを持たせて作製しなければ、咀嚼力に耐え切れずに欠けてしまいます。すると、粘膜に相当する部分が厚くなって、入れ歯を装着した際の異物感が強まります。
口蓋(口の中尾天井部分)に分厚いプラスチックが入ったまま、食事をすることを想像してみましょう。異物感があるだけでなく、食事そのものがあまり美味しく感じられなくなりますよね。
丈夫な金属であれば、ある程度薄く作ったとしても欠けることはありません。それに加えて、金属は熱の伝導率が良いので、食事の温度も上手く伝わり、入れ歯の違和感を軽減させる役割も担っているのです。
保険適用にならない入れ歯のデメリット
保険適用にならない入れ歯は、当然のことながら治療費は全額負担です。
ですので保険治療と比べると、治療費が高額になるというデメリットがあります。
その他、治療法によっては適用が狭くなるケースも多々あります。
例えば、クラスプを金属からアクリルレジンへと変えるノンクラスプデンチャーでは、一般的な入れ歯よりも適用できる範囲が狭まるのです。このように、使用する材料を自由に選択できるからといって、メリットばかりを享受できるわけではないのです。
保険適用にならない入れ歯の費用相場
自費治療の入れ歯の費用は、使用する材料や治療法に応じて大きく異なります。
部分入れ歯に関しては、15~350万円程度を費用の相場とお考えください。
一方、総入れ歯に関しては、30~200万円程度が相場となっています。
保険から自費へと切り替えると、単に費用が3割から10割負担となるわけではなく、実際には10倍以上もの費用がかかることになるのです。
入れ歯以外の治療方法について
歯を失った際には、入れ歯以外にもブリッジやインプラントといった治療の選択肢が存在しています。
それぞれどういった特徴があり、どのくらいの費用がかかるのかについて解説します。
ブリッジの特徴と費用相場
歯の修復治療の後に、クラウンと呼ばれる被せ物を装着することがあります。
ブリッジは、そのクラウンをダミーの歯の支えにして連結した装置です。
ブリッジとクラウンの大きな違いは、歯を失っているかどうかです。
ブリッジでは、失った歯の部分に被せ物のような人工歯を配置します。
人工歯を支えるのは両隣りの歯で、例えば1本の歯を失った場合は、両隣り合わせて3本の被せ物が装着されたような状態となります。
ただ、ブリッジが適用されやすいのは、失われた歯が1~2本程度のケースで、それ以上増えてしまう場合は入れ歯で対応するケースも出てきます。ブリッジにかかる保険適用の治療費は、1~3万円程度となっています。もちろんブリッジにも自費診療はあります。作る本数にもよりますが、治療費は30~80万円程度となっています。
インプラントの特徴と費用相場
最近、入れ歯やブリッジの代替治療として普及しているのがインプラントです。
インプラントはブリッジと異なり、失われた歯が何本であろうと適用することができます。
また、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込みますので、入れ歯やブリッジのように、周りの歯に頼る必要がありません。それだけに、審美性と機能性に優れた治療法といえます。
ただ、顎骨の状態によってはインプラント治療を施せないケースもあります。インプラントの治療費は、1本あたり30~50万円程度が相場となっています。
まとめ
咬み合わせのバランスの悪さや虫歯や歯周病、あるいは事故による外傷など、歯を失う原因は様々です。
共通して言えるのは、歯が1本でも欠損している状態は、口腔内全体に大きな悪影響を及ぼすということです。そこで、第一に挙げられる解決策が欠損部の回復です。
入れ歯治療は、保険適用か自費治療かの大きく2つに分けることができます。
どちらにもメリットとデメリットがあり、片方が絶対的に優れているとは言い切れません。ですので、どちらを選ぶかは、治療を担当する歯科医師に相談することをお勧めします。
ただ、入れ歯が唯一の治療法ではなく、ブリッジやインプラントといった治療の選択肢があることも知っておいてください。
これらの治療法も一長一短といえますが、ケースによっては最良の治療法となることも少なくありません。大切なのは、複数の選択肢を提示してくれて、インフォームドコンセントを実践する歯科医師を見つけることです。
そうすれば自ずと、あなたにとって最適な治療法を見つけ出してくれることでしょう。